「ネイチャーポジティブ」を具体化した提案に審査会場からどよめき/イオン eco-1グランプリ 座談会 「ネイチャーポジティブ」を具体化した提案に審査会場からどよめき/イオン eco-1グランプリ 座談会

高校生が学校単位で取り組む「エコ活動」を表彰する「第11回イオンエコワングランプリ 脱炭素社会の実現に向けて」(イオンワンパーセントクラブ主催、イオン環境財団、毎日新聞社共催、内閣府など後援)で、内閣総理大臣賞を受賞した三重県立明野高と愛媛大附属高の生徒たちが3月、毎日新聞東京本社で対談した。それぞれの活動を振り返るとともに、持続可能な未来を実現するために高校生ができることを語り合った。【斎藤有香】

対談には、研究成果の発表をした明野高の金谷かぐらさん(当時高3)、宮本望愛(もあ)さん(同)愛媛大附属高の村上陽向(ひなた)さん(当時高2)、近藤百々花(ももか)さん(同)保全生態学者で国立環境研究所室長の五箇公一さんが参加した。

受賞校の活動内容

  • 内閣総理大臣賞(普及・啓発部門)
    三重県立明野高
    「エコフィードで地域にあかりを! 持続可能な畜産の輪を伊勢志摩の地から」
    明野高は、地元のビール工場で廃棄されるモルト粕などの食品廃棄物を収集して飼料「エコフィード」を開発。豚に与えた結果、肉質が向上し、ブランド豚として老舗精肉店で販売されている。
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  • 内閣総理大臣賞(研究・専門部門)
    愛媛大付属高
    「海洋マイクロプラスチック汚染の実態調査と解決に向けての活動」
    愛媛大付属高は、海洋プラごみの実態を調査し、農業や漁業に使われるプラスチックが夏に急増することを突き止めた。また、海に生息する細菌が作るプラスチックなら海洋で分解されるとして、細菌を採取、培養し、海洋生分解性プラスチックを作成した。
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ハイレベルな発表に会場からどよめき
明野高・金谷さん
―― 内閣総理大臣賞を受賞した感想を教えてください。

明野高・金谷さん この研究は先輩方から引き継いできて、自分たちの代でさらに良いものにしたい、地域を明るくしたい、とすごく熱意を持ってやっていました。提携しているお肉屋さん、飼料の原料を提供してくれる業者さんも、自分事のようにうれしいって言ってくれたので、これからも他の企業を巻き込んで、一緒にやってくれる企業が増えたらいいなと思います。

愛媛大附属高・村上さん 大会の結果が「イオン」の中にポスターで貼ってあるのを見た中学の友達から急に連絡が来たりして、反響に驚きました。私たちもこの研究は先輩から引き継いだものなんですが、先輩にも報告したら喜んでくれて、本当よかったなって思いました。

―― 審査員を務めた五箇さんは、両校の活動をどう評価しましたか。

五箇さん プレゼンの審査会場が、どよめいたんですよ(笑)。あまりにハイスペックな発表で。今まで環境問題は「生産性」という部分でネガティブな印象が強かった。環境に良いことをすると、企業や生産者にとって利益の面で損をするイメージだった。一方で、環境省では最近「ネイチャーポジティブ」といって、自然に対して良いことをすることで、生産性を上げるという、これまでのネガティブ思考とは逆の経済活動を達成しようと企業や自治体に働きかけているところで、両校とも非常にネイチャーポジティブな対策をしていたと言えるでしょう。地元の技術や材料を大事にするという取り組みが高校生らしいし、私自身は非常に高く評価しました。

―― 愛媛大附属高の活動について感想を。

五箇さん 海洋プラスチック汚染の解決に向けての研究は、プロの研究者の目線から見ても、本当に高度でびっくりしました。プラスチックの汚染源を追跡して、主な汚染源の一つに農業用のマイクロカプセルがあることを突き止め、解決策として生分解性プラスチックを使おうという発想に至り、実現した。なおかつ、その生産コストも考えて提言している。研究展開に起承転結ができていました。

明野高・宮本さん 印象に残ったのは、海に流れ着いているプラスチックの中に、水田でお米の肥料に使われるプラスチックがたくさんあるっていうところですね。お米を栽培するうえで肥料は必要で、それを生分解性プラスチックに変えていけると、本当に環境改善につながるんだろうなと思いました。

明野高・金谷さん 生分解性プラスチックの生産コストを1000分の1に下げたっていうのが本当にすごい。私たちの研究でも、豚の飼料コストをどう削減するかは大きな課題でした。コストを減らすと、多くの人がこの技術を使いたいとか、もっとよく知りたいとか、どんどん普及につながっていくんじゃないかなと思いました。

―― 明野高の活動はどう思いましたか?

五箇さん 明野高の成果は、個人的に一番のお気に入り。私自身、この国で今後の持続的社会達成の鍵は「地産地消」だと思っていて、今回の成果がまさにそこを技術的に前進させようという取り組みでした。廃棄食品をリサイクルしましたっていう活動自体はこれまでも結構あったけど、この研究では、無駄をなくしたうえに得られる養豚肉の肉質が非常に向上しているという科学データまで出していました。オリジナル商品も実際に売られている。これは本当に画期的というか、「ネイチャーポジティブ」を具体化している技術だと思いました。

愛媛大附属高・近藤さん 地域に根ざしているだけではなくて、そこからSDGsとか、実際の豚の栄養価の向上とか、地域からいろいろなところに発展しているのがすごくいいなあと思いました。私たちの高校は元農業高校で、羊や鶏を飼育しているんですが、何か応用できることがあったら面白いなと思いました。

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